辞書をめくると「天籟(てんらい)」という言葉があります。
風が木々などに触れて自然に鳴る心地好い音や響き。
ひいては絶妙で優れた詩歌を指すこともあります。
雅楽も斯くやあらん。
自然の素材である竹の楽器に人間が息を吹き込み雅な響きを奏でます。
ところでこの「雅」の字。
その成り立ちには「かみ合って角がとれる」という意味が含まれています。
雅楽も斯くやあらん。
三管三鼓の音がかみ合い、ゆるやかで奥行きのある空間が生まれます。
さて当相模雅楽会は十年の節目を迎えることができました。
会の名前に「雅」の字を取り入れた重責を背負いつつ、
高みを目指して発足した十年前からのその歩みはといいますと・・・。
特定の指導講師を持たない会の宿命とはいえ、
会全体の演奏能力は遅々として向上せず、
常にレベルアップを目指して駆け抜けた十年というよりは、
限りある演奏可能曲を中心に繰り返し繰り返し稽古するという
ゆっくりゆっくり歩んだ十年でした。
この牛歩の会の営みに自省を込めながらも、
「階段を十年かけて一段上がる。急ぐな先はまだ長い。」と開き直り、
演奏能力を料理に例えるのは些か気後れしますが、
旬の食材を活かした名シェフの御馳走というわけにはいきませんので、
「弱火でしっかり煮込んだ素朴な家庭の味」と表現し納得することにします。
相模雅楽会十年ものの竹の音、心地好くお耳に届けば幸いです。
天籟を目指して。。。
平成二十五年吉日
相模雅楽会々長 小嶋大介